ニュージーランドを代表する果物といえば、キウイフルーツだ。農作物輸出額の約半分を占め、同国にとって重要な輸出品でもある。しかし今から10年ほど前まで、この国のキウイ産業は重大な危機に直面していた。
「キウイフルーツかいよう病」という病害が広まり、キウイ農園が甚大な被害を受けていたのだ。英紙「ガーディアン」によると、この病害による経済的損失は700億円近くにのぼり、なかでも新しく人気のあったゴールドキウイが、もっとも大きなダメージを受けていた。
この危機を救おうと立ち上がったのが、巨大企業のゼスプリだった。キウイフルーツ生産者を株主とし、世界各国にこの果実を輸出・販売している同社は、複数の資金提供者とともに、代替品種の開発に巨額の資金を投入した。
そうして生まれたのが、今や日本でも大人気のサンゴールドだ。ジューシーで甘く、ビタミンCが豊富なこの品種は、キウイフルーツかいよう病にも耐性があった。
ゼスプリは、ただちにこの品種の知的財産権を取得。サンゴールドは瞬く間に世界で人気となり、グリーンキウイの輸出額を上回り、この国のキウイ産業の再建に大きく貢献したのだった。
本社に届いた「不穏な噂」
ところが2016年、順調だったゼスプリ本社にある噂が届いた。サンゴールドが中国で栽培されているというのだ。同社は私立探偵を雇い、噂の真相を調査した。
調査対象となったのは、ハオユ・カオという中国人ビジネスマンだった。裁判文書によると、彼は四川省にサンゴールドの枝を密輸し、同地で雌株を大量に売っていたという。本人はこの行為を否定したものの、ニュージーランド高等裁判所は彼に賠償金として10億8000万円を支払うよう命じた。
これはつまり、ゼスプリが裁判に勝ったということだ。しかし一方で、同社は中国におけるサンゴールドの栽培・流通について、すでにコントロールを失っていた。
そもそも、キウイは中国からやってきた
このような中国の状況を前に、ニュージーランドとゼスプリは厳しい立場に置かれている。
同社は、中国で許可なく栽培されたサンゴールドを自ら買い取り、それをゼスプリブランドとして販売するという大胆な戦略を生産者側に提案。中国の生産者たちと協調路線をとるか、対立姿勢をとるのかをめぐる投票が、今週、ゼスプリの生産者らによっておこなわれる予定だ。
ニュージーランドにとって、中国は最大の貿易相手国だ。地政学的な観点からしても、中国政府に対し強気に出ることは現実的ではない。同大学の国際法教授、アンドリュー・ギレスピーは次のように語る。
「この問題を強く推し進めた場合、中国政府を怒らせる可能性があります。あらゆる訴訟と同様、ニュージーランドは理論的には勝つことができますが、多くの場合、勝利の代償はそれで得られるものよりも大きくなるでしょう」
皮肉なことに、キウイはもともと中国からやってきたものだ。1904年、中国の原種がニュージーランドに持ち込まれ、それが品種改良されて現在のキウイフルーツが誕生した。
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