人がオンライン空間で過ごす時間は、パンデミック中に飛躍的に増えた。増加したオンライン時間は、パンデミック収束後もさほど減らず、増加状態が続くとみられている。
それに伴い、「主人公症候群」というデジタル空間が促進する、新たな精神疾患が注目を集めている。
現時点では、曖昧な点もあり「診断可能な精神疾患としては存在していない」が、精神医学に詳しい専門家らによれば、現れる症状には下記のようなものがあるという。
「自分自身をある種の架空の人生の主人公として見立てて、その様子をソーシャルメディア上に投稿する」
この場合の“架空の人生”は本人の生活を反映しているものが多いが、なかにはまったく他人の人生であるケースもあるという。主人公症候群は「ミュンヒハウゼン症候群と似ている」との見解もある。
ミュンヒハウゼン症候群とは、周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりする症状を指す。このような行動をとる理由は複数あるとされているが、主に「感情的な困難に対処するため」だと言われている。
もっとも「デジタル空間という場所が、人を主人公症候群に陥らせやすくしている」と、リードをはじめ複数の専門家が指摘している。
その理由として、米メディア「リファイナリー29」は、ソーシャルメディアでのコミュニケーションは「常に人目に晒されている」ことを挙げている。そして、それは交流する明確な相手が存在する交換型のプラットフォームに限らないという。
たとえば、アマゾンは何か商品を検索するたびに「あなたはこの商品も好きなのでは?」と、ネットフリックスは「まだ視聴中ですか?」と、「あなたに話しかけてくる」。
つまり、自分の一挙一動に対して「誰かから反応があるのが、オンライン上では“普通”になっている」と、同メディアは指摘する。こういった環境が、人に「自分のすべての言動や思考に必ず誰かが注目している」と思わせる一因となり、人を主人公症候群に陥らせているのではないかと述べる。
「主人公になりきって何が悪い?」
一方、自分の人生の主人公は自分なのだから「主人公になりきって何が悪い?」、主人公症候群は「自己のエンパワーメントにつながる可能性もあるのではないか」との指摘もあることに、「サイコロジー・トゥデイ」は触れている。
仮に理想の自分をデジタル上に形成し、自分を価値ある存在として認められるようになったとしても、デジタル上の住民の誰もが、高い価値を同じように感じるわけではない。それは現実世界と同じだ。加えて「デジタル上にも捕食者は存在する」。「最初は賞賛を送っていた人が突然、嘲笑を浴びせてくることだってある」。
また、仮にデジタルの自己の人生がうまくいっていたとしても、うまくいけばいくほど、現実の自己と乖離していくのであれば、「それは結果的に現実の自己のエンパワーメントにはならない」。
自己愛性パーソナリティ障害など、妄想を伴う障害を悪化させてしまう可能性もあると、専門家らは警告を鳴らしている。
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