前回に続き、「フィナンシャル・タイムズ」によるマイクロソフト社CEOサティア・ナデラへのインタビューを紹介する。今回は、マイクロソフトがここまでAIにのめり込む理由を記載する。
彼に対して、記者は、データの経済的価値や共有に関して望ましいことなのか、実際問題としてこれは実行可能なことなのかという点について質問をした。
それについてこう回答した。
「そもそもデータは誰のものであり、そのデータで誰が利益を得ているのか、というところを出発点とすべき。
権力の集中が際立つのは、消費者相手のインターネット企業の市場で、広告の市場では、権力の集中の度合いが非常に高い。
それに対して法人相手の市場はどうか?購入した企業かあるいは、その企業からサービスを享受した消費者なのか?という問題がある。
つまり消費者市場で起きていることは、市民のデータに関することだが、それは企業が世界各地の顧客の役に立つためにデータにアクセスしていることとは、はっきり区別すべき。」
とBtoC領域でのデータなのかBtoBでのデータなのか?ということを明確にすることが大事なのだ。
「テクノロジーをどう使うか」こそが重要
また彼はマイクロソフトがAIに注力している理由をこう解説する。
「AIデータという、いま大きくなりつつあるリソースから価値を引き出せる能力がAIにはある。新薬の開発であれ、精密農業であれ、私たちが直面する難題に対し、解決策を出そうとする人たちの手にAIを渡せれば、それは大きな変化をもたらせるはず。
大事なのは、どうやってそれを使えるようにするのか、というところ。そこに起業家が果たすべき役割があり、国家が果たすべき役割があり、社会が果たす役割がある」
続けてAIは中央集権型のテクノロジーか?それとも分散型のテクノロジーなのか?ということについては以下の回答をしている。
「いまから10年後、いまだに企業への権力の集中に関する話をしているとしたら、それは私たちがグローバル社会として、新しいテクノロジーが持つ世界を変える力を現実化できなかったということ。
なぜ私は次世代のテクノロジーが民衆に力を与えると希望を持っているのか。それは分散コンピューティングもクラウドもエッジもAIも、それから拡張現実(AR)や複合現実(MR)なども、変化をもたらす力があると考えているから。
こうした技術は医療を変え、農業を変え、製造業を変える。経済が余剰を生み、その余剰が広く行きわたっていく。これを達成できないなら、私たちはグローバル社会として失敗してしまったということだ。
私はここが大事だと考えている。これからの10年、IT業界は、うまくいけば、周囲に溶け込んでいく感じになるはずだ。いまのようにテクノロジーだけが過剰に礼賛される状況は終わりにしなければならない。10年後は、テクノロジーが私たちと世界にどれだけ大きな影響を与えたのかを語りたい。
私自身が世界市民として、そのことを望んでいる」
ということであった。
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