欧州のニュース専門局「ユーロニュース」などによると、ポルトガルの新法では、雇用主は勤務時間外に労働者に連絡を取った場合、罰則を課せられる可能性がある。
新法では、従業員の自宅の電気代やインターネット料金の一部負担も企業に義務づけた。さらに、リモートワーク中の仕事ぶりを雇用主が遠隔監視することも禁止され、子供が8歳未満なら上司の事前承認なしに在宅勤務ができるようになった。
また、従業員の孤立化対策として、企業は少なくとも2ヵ月に1度は対面式のミーティングを行うことも求められている。
「世界有数の大胆な取り組み」
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、契約労働時間外の連絡や、業務の遠隔監視を禁止したのは「リモートワークを規制する世界有数の大胆な取り組み」と報道。ポルトガルは、労働者の就業外の時間を正式に保護し、仕事に関連するコストを抑制するための法律を制定した稀な国、とも記している。
また、ポルトガルはデジタルノマド(ITを活用して、旅行しながら仕事をする人々)の人気の渡航先となっており、こうした人々へのアピールもこの法律の目的の1つ、と同紙は報じている。
アメリカでも可能なのか?
この新法に関してイギリスの「ガーディアン」紙は「ポルトガルは終業後に上司からの連絡を禁止したけれども、アメリカでもそれは可能か?」と題した記事を掲載。
現代では、テクノロジーの導入により、業務時間外や週末も勤務時間になりうる「常時稼働」の状況が生まれ、労働者は仕事と私生活の境界を回復させる助けを必要としていると、ポルトガルの新法の意義を位置付けた。
記事では実現可能性について、アメリカの複数の識者の意見も複数紹介された。
米シンクタンクの「センチュリー・インスティテュート」で女性の経済的正義を担当しているジュリー・カッシェンは、「アメリカでは、仕事と生活や家庭との両立を容易にする政策がない、という長い歴史があります」とコメント。法律レベルでの規制は難しく、企業レベルでの方針設定が現実的だと指摘した。
カリフォルニア大学ヘイスティングス・カレッジの法律学教授のビーナ・ドゥバルは、アメリカでも同じような法律制定は法的には可能だが、経済界の反発と、議員や裁判所がビジネス上の決定に干渉することに対し非常に消極的、という2つの障壁があるとしている。
だが「労働運動を通じて、また労働運動とともに現れるかもしれない文化的な変化によって、この状況を変えることができるかもしれません」とも同紙にコメントした。
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