日本に向かうコンテナには、選手村に滞在するアスリートや職員たちが使うさまざまな日用品がいっぱいに詰まっている。
ニュージーランド選手団はアイスベスト(アイスパックを装着できるベスト)やフローズンドリンク製造機を持ち込んでいる。
ほとんどの国の選手団が栄養ドリンクや携帯食を持ち込んでいるが、それぞれバラエティに富んでいる。たとえばイギリス選手団のリストには、4万5000個のティーバックと8000食分のオートミール粥(ポリッジ)が記載されている。
カナダの代表団は、2020年に備えて3万1000着を超える衣服を荷造りした。しかし大会が延期されたため、梱包は解かれ、衣服はすべてモントリオールの倉庫に干されており、今回それをまたあらためて積み直さなくてはならなかった。
最難関は首都圏の交通渋滞
総経費の30%が輸送の「最終行程」、すなわち運送会社の倉庫から最終目的地までのラスト数キロに費やされ、またトラブルの70%がこの行程で発生する。
東京での輸送における最難関は交通渋滞だ。この大都市圏には、3700万人もの人々が住んでいる。パンデミック下で無観客が決定したとはいえ、それでも日常的に移動する人の数は莫大なのだ。
12日、パンデミックが始まってから4度目の緊急事態宣言が発せられた。しかし、主要5都市での人出の減少率は、対前週比でわずか1%未満に止まる結果となった。
28の競技会場が選手村から10キロ以内に位置し、そのなかには国立競技場も含まれる。その他14会場は遠隔地だ。たとえば、ゴルフの会場となる霞ヶ関カンツリー倶楽部は選手村から70キロ離れており、移動には陸路で通常3時間ほどかかる。
用具の運搬ミスが招いた悲劇
各会場、各イベント運営のサポートは、ボランティアが中心となっている。パンデミック前には、11万人のボランティアスタッフが召集されていた。
今やその数は減り、国内ボランティアスタッフ1万人が辞退、国外スタッフ8000人が入国禁止となった。緊急事態宣言発令のため、ボランティアスタッフの数はさらに少なくなるかもしれない。
感染拡大防止のため実施される厳しい規制、かつてなく複雑化したイベント運営プロセス、そして人手不足のために、今、日本という国の組織効率が問われようとしている。
試合に関わるボランティアの動きは迅速でなければいけない。そして用具は、細心の注意をもって追跡されなければならない。
たとえば、メイン・スタジアムで行われる投てき種目では、円盤、ハンマー、槍、砲丸が用いられるが、これらの投てき用具のすべてが、何百人もの選手それぞれの専用であり、その選手がどこの会場に何回移動するのかが登録されている。
事前に登録された分の投てきが終われば、決勝に進出できなかった選手の用具は回収され、帰国までの間保管されなければいけないのだ。
ミスが起これば競技は中断されるかもしれず、ベストパフォーマンスを発揮するための選手の集中を削ぐことにもなりかねない。2008年の北京オリンピックでは、実際にこうした事態がブラジル代表棒高跳び選手ファビアナ・ムレルを襲った。決勝戦で、適切なサイズの棒が見つからなかったのだ。
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